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業務改善事例

介護記録のペーパーレス化|タブレット導入なしでも始められる方法

「ペーパーレス化=高額システム導入」ではありません

介護記録をデジタル化したい。でも、費用がネックで踏み出せない。

介護施設の管理者からよく聞く悩みです。「ペーパーレス化」という言葉を調べると、タブレット端末の一括購入、専用ソフトのライセンス費用、サポート契約——と、数百万円規模の見積もりが出てくることもあります。予算が限られている施設にとって、これは現実的な選択肢ではありません。

でも、少し立ち止まって考えてみてください。記録をデジタル化することと、高額なシステムを導入することは、別の話です。

Googleアカウントがあれば、今すぐ費用ゼロで始められます。完璧なシステムでなくていい。まず「紙に手書きして、誰かが転記する」という二度手間をなくすことから始めるだけで、現場の負担は確実に変わります。


なぜ介護現場の紙記録はなくならないのか

介護施設の記録業務を見ると、似たような風景があちこちにあります。

バイタル測定の結果をメモ用紙に書く。食事摂取量を専用の記録用紙に書く。それを夕方のシフト終わりにまとめてPCに入力する——。

この「二度書き」が、現場スタッフの時間を毎日少しずつ削っています。1回の転記が5分だとしても、1日3回×スタッフ10人で計算すると、施設全体で1日150分、月に約50時間が転記作業だけに消えていく計算になります。

「でも、うちのスタッフはスマホ操作が苦手で……」

そういう声もよく聞きます。ただ、実際にGoogleフォームを試してみると、多くのスタッフは数日で慣れます。ボタンを押して数字を入力するだけの操作は、手書きより難しくはありません。難しさを感じるとすれば、「新しいことへの最初の一歩」だけです。


ステップ1:日報・バイタル入力をGoogleフォームに移す

最初に手をつけるのは、毎日必ず発生する定型記録です。バイタル測定(体温・血圧・SpO2)、食事摂取量、水分補給量、排泄記録あたりが候補になります。

Googleフォームで入力シートを作る手順はシンプルです。

  1. Google Driveを開いて「新規 → Googleフォーム」を選択
  2. 項目を追加する(利用者名、日付、測定値など)
  3. 回答形式を選ぶ(数値入力、選択肢、テキストなど)
  4. 完成したらURLをスタッフのスマホに共有する

作成時間は、慣れれば30分程度です。スマホのホーム画面にブックマークしておけば、スタッフはいつでもすぐアクセスできます。

入力するデバイスは、スタッフの私用スマホでも施設の共用タブレットでも構いません。新しい端末を購入しなくても始められるのが、この方法の最大のメリットです。


ステップ2:スプレッドシートで記録を自動集計する

Googleフォームに入力された内容は、スプレッドシートに自動で蓄積されていきます。これは設定不要で、フォームを作った時点から自動的に連携されます。

スプレッドシートに記録が集まると、こんなことができるようになります。

  • 利用者ごとのバイタル推移をグラフで確認できる(手入力の集計が不要)
  • 特定の日付・利用者で検索して、過去の記録をすぐ見つけられる
  • 複数の記録者が入力したデータを、1箇所でまとめて確認できる
  • 「今週の平均体温が37.5度以上の利用者」など、条件を絞った抽出もできる

紙のファイルを1枚1枚めくって確認していた作業が、検索一発で終わるようになります。

少し慣れてきたら、**Google Apps Script(GAS)**を使った自動化も視野に入ります。「バイタルが一定の基準を超えたときにLINEやメールで通知する」「週次サマリーを自動で作成する」といった仕組みを追加することで、記録業務の価値がさらに上がります。ただし、これは後から段階的に取り組めば十分です。まずはフォームとスプレッドシートの連携から始めましょう。


ステップ3:段階的に電子化の範囲を広げる

日報記録の電子化がうまく回り始めたら、次の記録に広げていきます。

Phase 1(まず始める)

  • バイタル測定記録
  • 食事・水分摂取記録

Phase 2(慣れてきたら)

  • ヒヤリハット報告
  • 申し送りメモ
  • 緊急連絡・相談記録

Phase 3(さらに進める)

  • 月次の個別支援計画の更新管理
  • 家族への報告書の作成補助
  • 職員の業務日誌

一度に全部やろうとしないことが、長続きのコツです。「1つ導入 → 2週間様子を見る → 問題を修正 → 次を追加」というサイクルで進めると、現場の混乱を最小限に抑えながら電子化を広げられます。

「完璧に移行してからスタート」ではなく、**「使いながら育てる」**という感覚で取り組むのがポイントです。


費用ゼロで始めるための条件

この方法で費用を抑えるために必要なものは、以下だけです。

  • Googleアカウント(施設用のGoogle Workspaceがあれば理想。個人アカウントでも動作します)
  • スタッフが使えるスマホまたはPC(施設所有・私用いずれも可)
  • 最初の設定に1〜2時間の時間

維持費用は、Google Workspace Business Starterを使う場合でも1アカウントあたり月780円(2026年5月時点)です。スタッフ10人で月7,800円。数百万円のシステム導入と比べると、桁が3つ違います。

もちろん、将来的に介護ソフトや専用システムへの移行が合う施設もあります。ただ、「まずは動かしてみる」段階では、Googleのツールで十分な場合がほとんどです。実際に使いながら「自分たちに何が必要か」が明確になってから、本格的なシステムを検討しても遅くはありません。


「紙をなくす」より「手間をなくす」を目指す

ペーパーレス化の目的は、紙をゼロにすることではありません。スタッフが記録に取られている余計な時間と手間を減らすことです。

転記作業がなくなれば、その分の時間を利用者さんと向き合うことに使えます。過去の記録をすぐ探せるようになれば、申し送りの精度が上がります。データが集まることで、「この利用者さん、ここ最近食欲が落ちているな」という気づきが早くなります。

記録の電子化は、現場を便利にするための手段です。費用がないからといって諦める必要はありません。今あるツールで、今できることから始めてみてください。

「うちの施設でどこから手をつければいいか」が気になった方は、まず現状の業務を診断してみてください。改善のヒントを具体的にお伝えします。

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Author

村上慎吾(ムラシン)

ムラシンAI 代表

医療法人向け採用支援を10年以上経験。400人規模の総合病院での業務改善プロジェクトでは、86%の職員が時短を実感。現場を知る業務改善パートナーとして、東海エリアの医療・介護施設を支援しています。

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